ゲスト著者:
Marlanna Harringon, Senior Research Analyst, Data Platforms, IDC
Stewart Bond, Vice President, Data Intelligence and Integration Software, IDC
ガバナンスツールからAIインフラストラクチャへ
ここ10年ほど、データカタログやガバナンスツールは、企業のアーキテクチャにおいて周辺的な存在でした。コンプライアンスや文書化には役立つものの、戦略の中心に位置づけられることはほとんどありませんでした。
しかし、AIの登場によってその状況は大きく変わりました。AIモデルやAIエージェントの信頼性は、その基盤となるデータの信頼性に左右されます。そのため、データをカタログ化し、ガバナンスを適用し、適切に提供するプラットフォームは、もはや運用上の補助的な存在ではありません。経営層が慎重に判断すべき、重要な戦略的要素となっています。
IDCの「2025 Office of the CDO Survey」では、86%の組織が、生成AIおよびエージェント型AIを支えるために、データ管理への取り組みを強化していると回答しています。
予算と経営層の関心も同じ方向に向かっています。信頼できるデータを統合し、提供する基盤こそが、AIプロジェクトの成否を左右する重要なポイントになりつつあるからです。
これはもはや、単なるデータガバナンスの議論ではありません。AI活用に向けた準備の問題です。
こうした市場背景の中、IDCは「2026 IDC MarketScape: Worldwide Data Intelligence Platform Software Vendor Assessment」において、Preciselyをリーダーに位置づけました。
データインテリジェンスを変革するトレンド
2026年のIDC MarketScapeでは、15社のベンダーを評価しています。さまざまなベンダーが存在する一方、その戦略には明確な共通点が見られます。
すべてのベンダーが、生成AI、そしてますます重要性を増しているエージェント型AIを、データカタログ、データ品質、ガバナンスのワークフローに組み込む計画を示しています。
また、ほぼすべてのベンダーが、Model Context Protocol(MCP)または同等のオープンインターフェースを通じて、ガバナンスされたメタデータをAIエージェントが利用できるようにしています。
市場において特に顕著なのが、「デジタル・データスチュワード」の台頭です。
これは、データ資産の文書化、データ品質ルールの作成、改善策の提案など、これまで多くの時間を要していた手作業をAIエージェントが担い、その判断プロセスを人が確認・承認できるようにするものです。
多くの組織が直面している本当の課題は、ツール不足ではなく、人材と時間の不足です。そのため、データスチュワード業務を大規模に自動化できることが、急速にプラットフォームの必須要件になりつつあります。
同時に、「オープン性」をめぐる変化も進んでいます。
データプロダクトやデータコントラクトではオープン仕様の採用が進み、データリネージやストレージについても、OpenLineageやApache Icebergなどの標準を通じた相互運用性が高まっています。
その結果、企業はわずか2年前と比べてもベンダーロックインのリスクを大きく抑えられるようになり、プラットフォーム間の本当の差別化要因は、アーキテクチャとネイティブ機能の充実度へと移っています。
今後、市場を大きく前進させる2つの方向性があります。
- AIおよびモデルガバナンス:従来のデータガバナンスを土台として、モデルインベントリ、リスク分類、ドリフト監視などが、ロードマップ上の機能からプラットフォームの標準機能へと移行しつつあります。
- 非構造化コンテンツ:文書、画像、その他のダークデータも、構造化データと同じガバナンスされたカタログで管理できるよう、データインテリジェンスの対象範囲が拡大しています。
これらの動きは、企業がすでに把握しているデータを管理する段階から、AIがアクセスするあらゆるデータを管理する段階へと移行していることを示しています。
そして、こうした変化すべての根底にある重要な役割が、「コンテキストの提供」です。
IDCはコンテキストを独立した市場としてではなく、データインテリジェンスが担う新しいユースケースとして捉えています。
AIエージェントが、データセットの意味や出所、そしてそのデータが信頼できるかどうかを理解していなければ、自信があるように見えても、ガバナンスされていない、場合によっては誤った回答を生成する可能性があります。
データインテリジェンスとは、最終的には生のメタデータを意味のあるコンテキストへと変換し、人とマシンの双方に確実に届けるためのものなのです。
なぜ今、データインテリジェンス基盤の選択がAIのROIを左右するのか
その重要性は、具体的な成果として測ることができます。そして、データに対するインテリジェンスと、そのデータをもとに構築されるデータプロダクトは直接つながっています。
データカタログ、リネージ、データ品質、ガバナンスを整備することで、チームは生のデータセットを、責任の所在が明確で、容易に発見・アクセスでき、用途が定義されたデータプロダクトへと変えることができます。
IDCの調査では、データプロダクトの成熟度とAIの成果との間に明確な関連性が示されています。
データプロダクトの成熟度が高い組織は、成熟度が低い組織と比較して、
- 生成AIを本番環境で運用している可能性が5.5倍
- エージェント型AIを本番環境で運用している可能性が4.6倍
- 財務面・業務面で約3倍の改善を報告
しています。
だからこそ、データインテリジェンスプラットフォームの選択は、もはや後回しにできる戦略課題ではありません。AI投資のROIを左右する重要な要素となっています。
Preciselyは、AI対応データと信頼できるコンテキストの重要性が高まる中、現在の機能と将来を見据えた戦略の両面が評価され、IDC MarketScapeにおいてリーダーに選出されました。
市場全体に対するIDCの評価や調査方法については、「2026 IDC MarketScape: Worldwide Data Intelligence Platform Software Vendor Assessment」の抜粋版をご覧ください。
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